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 はじめ天の神様を招くため戸外に立てた武具やのぼり旗は、江戸中期以降は内飾りにも作られ、また、兜の飾りに取り付けられていた人形がやがて独立して、さまざまな五月人形になりました。ことに武家社会では端午を象徴する菖蒲の音が「尚武」に通じることから、この日は跡継ぎの将来を祝う大切な祝日でした。この「尚武」を現代的に解釈するなら、男の子が多くの困難に打ち勝ってたくましく成長することと考えてよいでしょう。身を守るための鎧兜や、あるいは五月人形を飾る習わしの中には、わが子の健全な発育を祈る両親や家族たちの、真剣でしかもあたたかな祈りが込められているのです。